JINS JINS PARK

2024.10.09

ジンズのたねまき

子どもたちに本気の「小売り」体験を。「こども起業チャレンジ」開催しました!

危機感から生まれた「群馬ビジネスキッズチャレンジ」

JINS創業の地 群馬県前橋市にオープンした施設「JINS PARK」。公園のように開かれた「みんなの場所」を目指して、2021年から営業しています。

オープン以来、地域の方々とコミュニティをつくり、誰もがたのしめるイベントを季節ごとに開催してきました。この取り組みの背景について、JINS 地域共生事業部 五十嵐は次のように話します。

五十嵐「わたしたち地域共生事業部は、地域が抱える課題に向き合い、共に成長できるよう取り組んできました。とくにJINS PARKでは、前橋市の地域コミュニティのハブを目指し、営業開始以降、ワークショップを開催するなどして地域の方々の交流を少しずつ育んでいます。
一方で街の人口減少問題に対しては『いずれ小売業が成り立たなくなる日がくるのでは?』と危機感を持ちつづけてきました。
街をもっと盛り上げるため、わたしたちにできることはないかと準備したのが、JINS PARKを飛び出して企画したイベントです」

今年の夏、五十嵐は夏休み期間をフル活用したスケジュールで、子どもたちがたのしみながら学べるプログラムを考案しました。

群馬に住む子どもたちに、「大人になってからも地元で暮らしつづけたい」と思える体験を提供する。そんな企画趣旨に賛同してくださったのは、前橋市川原町でフォトスタジオを営む「STUDIO LINK」、群馬で多様な学びの場を提供している「未来を創る会」のみなさんです。

共催のみなさんと立ち上げたプロジェクトは「群馬ビジネスキッズチャレンジ」と名付けられました。なかでも目玉となるのが、小学3年生から6年生を対象とした「こども起業チャレンジ」です。

4回にわたる特別講座で小売業の仕組みを学びながら、商品の仕入れや値付けを体験。最終日には、前橋市の敷島公園で開催されるイベント「ホリデーインまえばし」に出店するという、本気の仕事体験プログラムです。

チラシや特設サイトで告知したところ、予定人数に対して2倍以上の応募者が……! 運営スタッフたちは想像以上の反響に驚きつつも、参加する子どもたちの期待に応えなければと準備により力が入りました。

こども起業チャレンジ、始動!

7月19日に開催された初回講座。会場のJINS前橋本社には、23人の子どもたちが集まってくれました。

アイスブレイクの時間をたっぷりとったあと、子どもたちは4つのチームに分かれて着席。「STUDIO LINK」代表 大川渉さんの進行のもと、小売業の基本を学んでいきます。

回を重ねるごとに前のめりになっていく子どもたち。とくに白熱したのは「仕入れ」をテーマにした第3回講座でした。「ホリデーインまえばし」で販売する商品をチームで決める大事な時間です。

イベント開催日は猛暑が予想される8月25日。出店場所は屋外。「ここではどんなものが売れるだろう?」。地元のドラッグストアなどの協力で作成された商品一覧から、子どもたちは上限7000円の予算で品物を選定していきます。

子どもたちのメモには、サイダー、ゼリー飲料、日よけマスク、うちわなど、屋外イベントのお供に欲しくなる品物がズラリ。話し合いを重ねて、納得の品揃えが完成しました。

つづいて第4回講座で取り組んだのは、商品の値付けです。「売上で一番をとるぞ!」。子どもたちの負けん気に火がつき、議論にいっそう力が入ります。

ひとつのチームは「いかに利益を生み出すか」をじっくり考え、高めの価格設定に。あるチームは「値段は低いほうがよろこばれるから」と最低限の利益を上乗せした価格にしました。

「たくさんのひとに来てもらいたいね」。子どもたちの興奮冷めやらぬまま、第4回は幕を閉じたのでした。

「どうやったら売れるかな」はじめての販売体験

待ちに待ったイベント当日。「ホリデーインまえばし」は、ものづくりを体験できるワークショップや飲食ブースが並ぶ毎年人気のイベントです。今年もオープン前からたくさんのひとで賑わっていました。

「こども起業チャレンジ」の出店場所は、特設ステージや受付ブースに囲まれた好立地。子どもたちはここで午前10時から正午まで販売します。

会場の熱気に刺激を受けた子どもたちは開店まで待ちきれません。はやる気持ちを抑えられず、予定より30分はやく開店しました。

ところが。子どもたちはいざとなると尻込みしてしまい、お客さまへの声かけもままなりません。

そんななか、メンバーのひとりが勇気を出して声を張りあげました。「いらっしゃいませ!」
おおきな声に背中を押されて、ひとり、またひとりと、呼び込みに加わっていきます。徐々にブースが活気にあふれていきました。

ひと足先に売上を伸ばしたのは、手頃な価格設定が売りのチームでした。その様子にあわてた周りのチーム。お客さまへの声かけに工夫を凝らして挽回をはかります。

「シトラスの香りがさわやかな汗拭きシートを売っていますよ」「つめたいスポーツドリンクはいかがですか」。大人顔負けのセールストークに、足を止める来場者もいました。

ついには商品を詰めた箱をかかえて、出張販売をはじめる子どもも! 「独自の知恵と工夫で課題を解決していく姿に感心しきりだった」と五十嵐は当日を振り返ります。

それぞれが精一杯に励んだ結果、売値を低く設定した2チームが時間内に完売しました。ほかのチームも売れ残りはほとんどなし。子どもたちの表情は達成感に満ちていました。

気になる売上。結果はいかに……?

後日、各チームの売上と利益の集計結果を発表する場が設けられました。

売上利益ともに好成績を残したのは、売値を高く設定したチームでした。結果を聞いた瞬間、「やったー!」と声をあげ、ガッツポーズを決めるメンバーたち。

一方、商品をはやく売り切ったチームは、安価な価格設定が影響して売上利益はやや少なめの結果に。くやしさを隠せない子どもたちに、五十嵐はこうフィードバックしました。

「手頃な価格で、多くの数を売り、たくさんのひとによろこんでもらう方法は、じつはJINSの販売戦略とおなじです。みなさんの考えた方法は決して間違いではないんですよ」

真剣に耳を傾ける子どもたち。小売業のおもしろさを、またひとつ理解できた時間でした。

地域一丸で子どもを育て、街を盛り上げる

参加した子どもたちからは、「本物のお店を起業しているみたいだった」「商品を買ってもらえたときはすごくうれしかった」「販売の仕事を体験できて自信になった」などの感想が寄せられました。

これらの声に確かな手ごたえを感じた五十嵐。プロジェクトを振り返って、次のように話します。

五十嵐「子どもたちの『はたらくこと』への関心は、以前よりぐんと高まったように感じます。彼ら彼女らのなかから、いつか群馬で起業するひとが現れたら嬉しいですね。
プロジェクトが実現するまで苦労もあったのですが、地域のみなさんの協力のおかげでここまでたどり着けました。心から感謝しています」

取り組みを終えてホッとしたのも束の間。とある団体から「こども起業チャレンジ」をうちでもやってほしいとのリクエストが。地域共生事業部は「受け入れ人数をさらに増やし、内容もブラッシュアップして臨みたい」と前向きです。

地域一丸となって子どもをたいせつに育てれば、街の発展にきっとつながる。そう信じて取り組んだ「こども起業チャレンジ」。初の試みは成功裏に終わり、はやくも次の一歩が見えています。

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CREDIT

執筆:森川紗名
写真:STUDIO LINK
デザイン:株式会社ASA
編集:春田知子(株式会社ツドイ)