今、僕が思う事
先に出すからこそ、入ってくるものがある
先日、準社員とパート従業員のベース時給を、東京水準に全国一律化することを
発表いたしました。
これは、政府が掲げる地方創生/東京一極化集中を是正する意味でも意義のある施策だと考えています。また私は、これからは本当に地方、地域の時代だと考えています。さらに言えば、地域から日本を変える時代になるとも感じています。
これからの企業や店舗は、その地域とともに共生することが大前提です。
「地方は物価が安いから、低い賃金でも生活ができるはず」
この考えが地域別賃金格差の前提にあります。
しかし、地方の店舗で活躍するスタッフのおかげで、その店舗が大都市圏の店舗よりも大きな利益を上げることもある。そうした活躍には、正しい評価で報いたい。そして豊かな人生を実現してもらいたい。そう考えて全国一律化に踏み切りました。
ただし、これは理想論や意気込みだけで済む話ではありません。例えば最低賃金が800円台だった地域の店舗時給が、1100円以上になるということです。
JINSは国内だけでも現在466店舗あり、対象者も2000名を超えることから、年間数億円のコスト増加要因となります。上場企業として、きちんと経営を成り立たせる必要があります。
それでも私は、今回この意思決定をすることに躊躇はありませんでした。
振り返れば2014年、小売業界で平均的な正社員給与だったジンズは、マーケティング費用を一気に削減し、給与を10%以上アップするよう制度を変更しました。このときのインパクトは年間10億円以上のコスト増でした。このとき、業績は必ずしも絶好調だったわけではありません。
なぜこのように考えたのか。普通は、
「事業努力をする → 高業績になる → 給与を上げる」
と考えるのかもしれません。しかし私は、
「給与を上げる・事業努力をする → 高業績になる」
こう考えたのです。
給与を上げるから事業努力がはじまるということではありません。
給与を上げ、同時に事業努力も重ねることで高業績を実現してみせる。この考えがベースにあります。「先に出すからこそ、入ってくるものがある」ということです。
日本語には「出納(すいとう)」「出入口」「呼吸」といった言葉がありますが、これらの熟語は、最初に「出す」を意味する漢字が来ています。
「呼吸」などはまさにそうです。先に息を吐くから、吸うことができるのです。逆に、一心に吸うから過呼吸になるのです。落ち着いてゆっくりと息を吐けば、自然に息が吸えてやるべきことが見えてきます。昔の人は、こうした世の道理、真理を踏まえて言葉を創ったのではないかと感じさせられます。
さあ、これからです。
人件費を上げてコストが増えたことで、業績を犠牲にするつもりはありません。ここからの事業努力によって時代に即した新たな価値創造に挑むつもりです。
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