JINS JINS PARK

今、僕が思う事

商業、工業、そしてデータ。

2024.08.27

私が持ち続けてきた課題意識として、「商業と工業を組み合わせられないか」というテーマがあります。ジンズはアイウエアを自社で開発し、店舗で販売しています。もともとは商業性の強い事業です。古くからの商業では、店員の愛想がよいとか、自分のことをよく知って好みを覚えているとか、サービスがよいといったことが重視されてきました。これは非常に重要なことです。今も昔も、良い商品やサービスを、適正な価格で、利便性よく購入したいというお客様のニーズが常にあります。これに加えてお客様は、気持ちの良い購入体験を得たい、自分が特別でありたい、といった欲求を持っています。これらを実現しながら自社の利益を確保することが企業にとって大切です。

考えてみると、昔は商業を商業として営んでいればよい時代だったかもしれません。しかし、私はずいぶん前から「等しく良質なものを、大量に、迅速に、低コストで提供するにはどうすればよいか」を考えてきました。つまり、商業に工業的な考えや仕組みをどう取り入れるかという課題意識です。

2015年にサンフランシスコにJINSの北米一号店を出店した際に、アイウエアの自動加工機を導入したことや、国内でアイウエアを自動販売機で販売したこともこの意識を具現化したものといえます。
ややもすると、商業において重要な接客よりも、オペレーションの工業化に心血を注いできたように聞こえるかもしれません。もっと手間なく自動で商品を売ることはできないかという点だけに目が向いているように思われるかもしれません。そうではありません。むしろ、全く逆なのです。私は以前、このように書いたことがあります。

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私たちが接客を大切にしながらも、これだけオペレーションにこだわるのは、経済合理性だけが理由ではありません。オペレーションの最適化が、結局においてお客様にとっての利便性と、スタッフの笑顔と、それによるトータルでのお客様満足を生み出すからなのです。
https://jinsholdings.com/jp/ja/ceoblog/20120911/
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当時は、コストダウンに加え、お客様に向きあう時間や気持ちの余裕を生み出すためにオペレーションの合理化(つまり工業化)が必要だという考えでした。これは今でも商売人として大切な考え方だと思います。
一方で、お客様や市場が大きく進化している最近では、さらに個別最適化も強く求められるようになっています。そこで私たちはグローバルで通用する顧客体験をゼロベースで定義し直し、オペレーションも含めてこれまでよりはるかに高いレベルで最適化しようとしています。
ジンズの戦略、テクノロジー、リソースともに、数年間で格段に進化しており、いまだからこそ可能になることがあるのです。

ここにおいてカギになるのは、「データ」です。
単に商業を工業化するだけでなく、事業を非連続といえるほどに進化させ、顧客体験そのものを一変させられる可能性があるとすれば、それはデータなのです。あらゆる業界で、データを本質的に活用し、事業を変えることができたプレーヤーが成功しています。データを取得する方法論、取得できるデータの質や量、そして取得したデータを分析し事業を変えるテクノロジー は、10年前、いや、3年前と比べても飛躍的に進化しています。ジンズはかなり前からテクノロジーを重視し、次々と新たな試みを続けてきましたが、これらをついに顧客体験に反映させる段階が来たという手ごたえがあります。

商業、工業、そしてデータ。これらを異質なものとしてバラバラに捉えるのではなく、お客様の体験のために、すべてを最適化していくこと。次は、米国の新店舗を皮切りに仕掛けていきます。難しいチャレンジではありますが、今のジンズだからこそできることがあるという手ごたえを感じています。

※社長メッセージは記事掲載時点における最新の情報や考えを、敢えてそのまま掲載しています。よりタイムリーにメッセージをお伝えすることを重視しているため、メッセージ内で掲載されている内容と、公式に発表されている実際の取り組みに多少の差異が生じる場合がございます。あらかじめご了承ください。