今、僕が思う事
想い抜くこと、AIと共存すること
先日、年に一度の「ジンズ決起会」を開催しました。海外メンバー約100名を含む、総勢1,000名近くの社員が参加し、これからのジンズを共に考え、共有する場となりました。
スペシャルゲストとして東京大学のAI研究第一人者・松尾豊先生をお迎えし、講演と対談の時間をいただきました。AI技術の未来にとどまらず、人間の本質にも通じる先生のお話は、大きな学びとなりました。
とりわけ印象的だったのは、AIの役割に関する視点です。
「AIには、人が感情的に価値を感じることに寄与する側面と、生産性やコストに寄与する側面がある。」
感動や喜びといった「人が価値を感じる瞬間」にAIはどう関われるのか。そしてもう一方で、業務効率やコスト削減といった合理的な側面でどう機能するのか。この両面をあわせ持ちながら、AIは進化を続けています。AIは精度もスピードも飛躍的に高まり、できることは格段に増えました。
一方で、こんな声もあるそうです。
「私のGPT-4を返してほしい。」
GPT-5への進化により、従来のやりとりの「感覚」が変わってしまった。これはAIが単なるツールではなく、「感情と結びつく存在」として受け止められ始めている証拠かもしれません。それだけ、技術と人との距離が近づいてきているのです。
ただし、AIがどれほど進化しても、人間にしかできない営みがあります。人の気持ちに寄り添い、誰かを祝うパーティーを開くといった、人ならではの行為です。これは時代が変わっても揺るがない人間性の根幹だと、松尾先生は強調されていました。
そのうえで先生は、AI活用の本質をこう示されました。
「大切なのは、リバランスする力です。」
合理性を重視する場面と、人間性を大切にする場面。その最適なバランスは時代や状況に応じて変わります。だからこそ偏らず、都度見直し続けることが、これからの企業に求められる姿勢なのだと。
松尾先生のお話から学んだのは、「AIに何が置き換えられるのか」「AIで全てを改革できるのか」といった問いやスローガンは、一見わかりやすくても本質からは外れている、ということです。大切なのは「何を実現したいのか」「何を大切にしたいのか」という前提。その答えによってAIの使い方はおのずと変わる。時代や環境に応じて常に最適化=リバランスしていくことが求められているのだと感じました。
私が「これからの時代、イマジネーションが大切では?」と尋ねたところ、松尾先生は力強く頷かれました。記憶や計算といった能力が評価されたのは人類史ではごく短い期間であり、本来人間が持つ想像力や空想する力こそ、これからさらに価値を持つとのお考えでした。その言葉に、深く共感しました。
私自身、JINSを銀座の一等地に出店したいと10年以上言い続けてきました。周囲からは難しいと言われましたが、想い続けた結果、2026年春、銀座中央通りの中心地にグローバル旗艦店「JINS銀座店」をオープンできることになりました。
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何かを成し遂げるには、イマジネーションと、想い抜く力が不可欠です。そしてその過程で、AIの力をどう活かし、どう共存していくかが問われます。技術に振り回されるのではなく、ビジョンの実現のために正しく活かすこと。
その重要性をあらためて強く感じた、有意義な時間となりました。
※社長メッセージは記事掲載時点における最新の情報や考えを、敢えてそのまま掲載しています。よりタイムリーにメッセージをお伝えすることを重視しているため、メッセージ内で掲載されている内容と、公式に発表されている実際の取り組みに多少の差異が生じる場合がございます。あらかじめご了承ください。