プロジェクトストーリー

#01

JINS Switch Project Story

度付きメガネにマグネット式プレートを重ねるとサングラスになる、1本2役の「JINS Switch(ジンズ・スイッチ)」。機能性はもちろん、豊富なデザインやラインアップが人気となり、Airframe、JINS SCREENに続く大ヒット商品となりました。このプロジェクトを推進し、現場の最前線で活躍する3名の社員に、成功に導いた働き方と、JINS Switchを開発することで見えてきた「あたらしい、あたりまえ」について伺いました。

  • 内海 允
    商品企画MD

  • 藤本 泰登
    商品計画DB

  • 柴田 文郷
    国内店舗統括

所属している部署と職種、普段の仕事内容について教えてください。

  • 内海/私は商品マーケティング本部でMD(マーチャンダイザー)の仕事を担当しています。具体的には、JINSの年間販売計画を立案し、毎月どのような商品で売上を立てていくのか商品構成を設計します。さらに、JINSのニュース性や先進性伝えられるような新しい商品企画を考えます。商品を通じてお客様に提供する価値を大きくしていくことが主務です。

  • 藤本/商品マーケティング本部でディストリビューターとして、国内約400店舗の店舗在庫をコントロールしています。新商品を含む商品の配分や自動発注の管理をし、MDが立てた販売計画に対し、売上と商品の欠品率のバランスを取りながら、適切な在庫量を維持できるように日々店舗在庫を調整する仕事です。

  • 柴田/私は、事業統括本部において店舗オペレーション部のシニアディレクターという立場で、国内約400店舗の全責任を担っています。店舗の皆さんが、接客を通じてお客様にJINSの魅力を届けていくために、商品に込められた想いやコンセプトを伝えていくなど、前向きに取り組めるよう導いていくことが主な役割です。

大ヒットした2019年のJINS Switchを生み出すために、どのような課題やミッションがありましたか?

  • 内海/僕にとっては、まず2019年に「JINS Switch」という商品をこの年の戦略商品とすると意思決定をしたことが大事な仕事でした。
    戦略商品をJINS Switchに決めた時点で、改善すべき課題が3点ありました。1点目は、在庫計画です。前年度のJINS Switchは狙っていた計画に対して在庫が少なすぎて、商品を希望するお客様に届けられなかったという反省点がありました。そこで2019年では、在庫をしっかり確保できるよう在庫計画を見直しました。
    2点目はは商品構成の改善です。より幅広い層のお客様に買っていただけるよう、例えばファッション性の高いアイテムを取り入れたり、男性向けにスポーツシーンで使えるアイテムを増やしたりするなど、商品構成を大幅に広げました。目的としては、単にラインアップを増やしたかったのではなく、JINS Switchという商品が、普段の生活のあらゆるシーンで使っていただけるものであることを示したかったのです。
    3点目が、販促、プロモーションの強化です。商品プロモーションの担当者と相談し、我々の想いや商品の魅力を日本中の老若男女に幅広く伝えるためには、SNSだけではなくテレビという媒体が最も効果的だろうと判断し、テレビCMを打つことにしました。MDとして、お客様に喜ばれる商品を作るということは常に意識していましたが、商品の魅力をどんなお客様に対して、どうやって伝えるのか、ここまで深く考えることはしていなかったので大変勉強になりましたね。
    結果として、想定以上の効果があったので、よいモノを作るだけではなく、お客様がお店に足を運ぶ動機づけやその手法まで掘り下げて考えることも、商品設計の大事な要素であることを学びました。

  • 柴田/社内全体でJINS Switchが戦略商品であることを理解し、全力で取り組むことができていました。それは内海さんが、プロジェクトがスタートした段階で、目標を「前回の生産数の3倍」と明確に設定し、その大きな責任や重圧を、プロジェクトリーダーとして自分が背負うという覚悟を示してくれたからだと思います。攻めの姿勢や勝負するんだという気合いがすごく伝わってきたし、私たちも「この勝負は彼に絶対に勝たせなきゃいけない」と思いながらやっていましたね。

  • 藤本/私は、販売計画や各プロモーションのアイデアなどが決まった段階で、どのくらいの量の商品をどの店舗に配分するかを考えるのですが、2019年のJINS Switchに関しては、販売目標がとても高かったのでプレッシャーをヒシヒシと感じていました。発売を始めた後も、初動の売上からその後の配分を計算しながら決めていくのですが、あまり夢見がちな数値にならないように、あくまでも実績に対してどれくらいの量が必要なのか、しっかり数字を見極めて配分数を決めるようにしていました。
    2019年のJINS Switchは、同じ商品でも、企画ごとにターゲットを意図的に変えているのが特徴でした。その企画意図にしっかり寄り添った配分ができるよう、類似商品の過去実績を細かく分析するなどの地道な作業を繰り返していきました。さらにそれぞれの商品をどんな客層に売りたいのか、どの年代に売りたいのか、企画の段階でMDとコミュニケーションを取りながらインプットしてもらって、戦略的に配分数を変えていくことにも力を入れていましたね。

  • 柴田/私は、会社としてJINS Switchをどういう戦略で販売していこうとしているのか、目標やプロモーションプランを明確にして、店舗の皆さんが迷いなく販売できる状態になれるよう注力しました。「昨年の3倍届ける」というメッセージは、「昨年は1週間で10本届けられた店舗は、今年は30本届けるんだ」という風に、店舗の皆さんにとっても具体的に頑張るポイントが想像しやすかったと思います。また、その大きな目標を達成することがどれだけ大変かもしっかり伝わったので、その目標を達成するための売り場づくりや接客方法などを各店舗が主体的に提案をしてくれたことも、販売数を伸ばせた大きな要因です。

プロジェクトの中で苦労したことは何ですか?また、チャレンジしたことは何ですか?

  • 内海/チャレンジしたことは、メンタルが辛い時も、とにかく熱意を捨てないということでした。基本的にMDは、商品を基軸に商品販売計画を作っていくので、「商売という物事の起点」になります。簡潔に言えば、最初に手を挙げる役割を担うことが多い部署です。自分が手を挙げたからには、最後まであきらめず、なぜそれをやりたいのか、各部署に熱意を持って伝え続けるということが一番大事なのだと思いました。
    もうひとつは、選択と集中です。これほど大きな選択を迫られたのは僕の仕事のなかでは初めてでした。JINSという会社は何でもやりたがりだし(笑)、やりたいことは何でも応援してくれる会社です。だからこそやりたいことを一本に絞ることは実は難しいのです。そういう意味でも今回、「JINS Switchさえ売れれば、なんとかなる」と言い切れるくらい、JINS Switchに戦略を絞り、あきらめずに周囲に熱意を持って伝え、最後までやり切れたことは個人的にもよい経験だったなと思っていますね。また、目標を絞って伝えることで、結果的に他の人も意思決定する上で動きやすくなるのだということを学びました。

  • 藤本/ディストリビューター(DB)というと、MDから下りてきた情報を、そのまま鵜呑みにして配分することや、店舗から吸い上げた情報をそのままMDに返すこともできますが、私はこの2年間ずっと「攻めるDB」になることを意識してきました。しっかりDBとして意思をもって考え、提案する。さらに積極的に情報をキャッチアップし、自らアクションを起こすことにチャレンジしてきたのですが、今回そうした姿勢が、MDとも店舗ともうまくかみ合ったような気がしています。

  • 柴田/JINS Switchが成功したら、会社としても成功したことになるし、失敗だったら、会社として失敗なのだ、というくらい振り切った戦略だったので、各店舗もJINS Switchを成功させるためにはどうしたらよいのか、よい意味で意見をぶつけ合いながら、それぞれ考えを巡らしていました。大きなチャレンジでしたが、全店舗でJINS Switchの戦略を共通理解し、ここまでみんなで振り切ることができれば、難しいプロジェクトも成功させることができるのだということを実感し、「振り切る」ことの意義を体感しました。

  • 内海/実際、柴田さんからの売り場変更の提案は、すごく早かったですね。柴田さんたちが店舗からいろいろな意見を吸い取ってくれ、それぞれの部署が最善策を講じてくれたおかげで、さまざまな問題にも迅速に対応できたと思います。モノがよいだけでは、前年の3倍という目標は達成できないので、今回は全社的にすごく連携が取れた1つのよい例だったんじゃないかなと思います。

  • 藤本/店舗の柔軟な対応もよかったですよね。商品がたくさん売れて、売り場がスカスカになってしまう時期に、どうしたら綺麗に見せられるのか店舗の工夫が随所に見られました。例えば欠品したJINS Switchの売り場に、サングラスを一緒に並べた店舗がありました。JINS Switchとサングラスはお客様のニーズが似ているため、一緒に並べることでお客様の選択肢が増えます。お客様目線で売り場を臨機応変に調整する対応力に驚きましたね。早速この店舗のやり方を他の店舗にも広めてもらいました。会社の方針を店舗に伝えるだけではなく、各店舗の取り組みを本部が吸い上げて共有するなど、いろいろなことがうまく循環できたことがJINS Switchの成功につながったのだと思います。

  • 柴田/私が今のポジションになった時、運営したいグループの理想形についてストアディレクター(店長)の皆さんに話したことがありました。それは、3000人の社員がいるなら、1人1つアイデアを出せば、3000個出てくる。だから社員が3000人いるということはものすごい強みになるし、一人一人の知恵やアイデアを活かせるグループにしたいと伝えたのです。社員みんなが自分たちで考えて仕事をし、知恵を出し合い、工夫しながら店舗運営していくことができれば、パートやアルバイトの方も、自分で考えて仕事するようになるし、積極的に意見を出し、店舗を良くしようと主体的に動く風土が生まれるのではないかと思っています。

プロジェクトを通してどんな「あたらしい、あたりまえ」を届けられたと思いますか?

  • 内海/JINS Switchによって、サングラスをかけることに対するハードルを下げることはできたのではないかと思っています。日本のマーケティングの中で、サングラスのシェアは他の国に比べて極端に低いのです。そもそもサングラスをかける文化があまりありませんよね。しかし、JINS Switchは普通のサングラスではないからこそ、みんなが気軽に手にとってくれたし、サングラスという壁を取り除く最初の一手にはなったのではないかなと思っています。

  • 柴田/しかも度付きのカラーレンズは、作成に日数がかかるので、すぐに持ち帰れないというデメリットがありました。JINS Switchならその日に持ち帰ることができます。明日海外旅行に行くという人も、購入してすぐに旅行先で使えるというのは今までなかった価値だし、店舗の皆さんも積極的にお勧めしやすい理由のひとつだったと思います。

  • 藤本/メガネの未来が広がったことを実感できたことが、個人的には嬉しかったですね。メガネの価値観を大きく変える商品を送り出し、さらに、こんなに買ってもらえるものなのかと日々数値を見ながら実感することができました。たくさんのお客様に喜んでもらえ、お客様の価値観の変化とともに、会社の成長を感じられる商品に携われたことはとても嬉しかったですね。
    DBとして学んだことは、欠品と売上のバランスに対する新しい視点です。JINS Switchは欠品したら売れないというロジックをぶち壊してくれました。欠品しても売れる商品もあるという非常識をまざまざと見せつけられ、KPI(Key Performance Indicator)で欠品率を追うだけではだめなのだということを痛感させられた商品でしたね。私の中でもすごく成長につながった「あたらしい、あたりまえ」だったと思います。

今後JINSで実現したいことは何ですか?

  • 内海/MDになり4、5年ぐらい経ちますが、MDとして企画した商品の中でも2019年のJINS Switchは、特に世の中に対して1つの提案ができたなと実感が出来た商品でした。この感覚は素直にうれしいと思っています。
    この感覚の本質は何かというと、お客様の中にある、商品を欲しいと思うツボを突くということだと思っています。「課題は何なのか」「どうすればもっとよくなるのか」ということを、いかにものづくりに落とし込めるのか今後も追及していきたいです。これからも、誰の思考にもなかったものを生み出し、「こんなことができたのか!」という発見や驚きを、商品を通して世の中に提案していきたいと思っています。そしてこの積み重ねが、結果的にJINSがブランドとして強くなることにつながるのではないかと思っています。

  • 柴田/現在の立場としての観点で言うと、約10年間変わっていない店舗のオペレーションを変えたいという思いがあります。もちろん自分ひとりではできないことなので、本部や店舗の仲間など、いろいろな人と協力して、新しい店舗のオペレーションを確立したいと思っています。

  • 藤本/SPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)というJINSの特徴を生かした在庫計画の改革です。JINSは自社で商品企画、生産から販売までを一貫して行っています。SPAは自社で企画製造できるというメリットもありますが、在庫が売れなかった場合のリスクもあります。
    新しい商品をどんどん作っても、会社として抱えられる在庫には限界があり、店舗の棚も有限なので、新商品を入れるためには、何かを削らなくてはなりません。そのため適切に在庫をコントロールしながら、売れている店舗に商品を寄せて、売れない商品はどうすれば売れるのか考え、上手に流していくことが必要です。
    例えると血の循環のようなものかもしれません。在庫を抱えているという状態は、会社として血がきちんと循環していないのと同じことです。在庫がスムーズに流れれば、キャッシュが生まれ、そのキャッシュを使って新しい商品を作り、販売することができます。次のチャレンジをするためにも、会社の血の巡りをよくし、在庫の循環が滞らないよう、最適な在庫コントロールが重要です。そのためにネックになるところは改善し、壊すべきところは壊し、作り直せるところは作り直しながら、さまざまなチャレンジを続けていけるような会社の土壌をつくっていきたいですね。

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